News Archive : Japan Real Estate

Thursday, November 24, 2005

Funds Continue to Pour into Japanese Real Estate

膨張不動産マネー(上)過熱の陰に変調あり――流入10兆円、選別色も。
2005/11/22, 日経金融新聞, 1ページ, 有, 2773文字

 不動産への資金流入が膨張を続けている。国内外の不動産私募ファンド、不動産投資信託(REIT)による不動産の取得額は十兆円規模に達し、東京の地価が反転する原動力になった。だが、借り入れ依存度が上がるなど危うさも垣間見える。(張勇祥、財満大介)=不動産ファンドは2面「ミニ辞典」参照
低下する利回り
 東京ディズニーランドの真横。高級ホテルが乱立する一角に四百室を超える大型ホテルの建設が始まっている。鹿島に建設を依頼したのは不動産ファンド。「ホテルの事業者に転貸することで、安定した収入が見込める」と説明。高級レストランは設けず、室料も近隣のライバルより低くするという。ファンドがディズニーリゾートのホテル戦争に加わる。
 千葉県のゴルフ場や沖縄県のチャペル、箱根の旅館、グアムのホテル。今年に入り、ファンドによるリゾート物件の取得が相次ぐ。賃料が安定している都心のオフィスビルは値上がりで利回りが低下、より高利を求めて地方都市のオフィスに向かったファンド資金が、さらに景気の波をかぶりやすいリゾート物件にまで食指を動かしている。
 REITの運用資産は九月末で三兆円を突破。国内と海外の不動産ファンドの運用額もそれぞれ三兆円を上回るもようで、市場性のある不動産に向かう投資資金はすでに十兆円規模に達した。借り入れを活用して一〇%超の利回りをうたうファンドが多く、低金利に飽きたマネーが不動産市場に向かっている。
 資金流入に伴い、賃料収入を物件価格で割った利回りは低下している。日本不動産研究所の調査では東京・丸の内、大手町のオフィスビルの期待利回りは四・四%。調査対象、手法の違いはあるが、利回りは一九九九年に比べ一・九ポイント低下した。都心の優良物件はファンド間の奪い合い状態で、三%台が珍しくない。
 地価底入れが東京ばかりか地方にも波及し始めているにもかかわらず、値下がり物件を整理する動きも少なくない。オリックス不動産投資法人は一日付で七物件を一括売却したが、仙台市や水戸市などの小型ビル四棟で売却損が発生した。長期にわたり入居率が低迷していた物件だ。同法人は「十億円未満の小型物件を売却し管理効率を改善する」と説明するが、物件次第では賃料上昇は到底見込めないとの指摘もでている。
借り入れに依存
 ファンドの借入比率が上がっていることを警戒する声もある。ファンドは一般に、投資家の出資と金融機関からの借り入れを組み合わせ資金を調達する。住信基礎研究所の推計ではファンドの借入比率は昨年末は六割台だったが、今年に入り七割を超えた。低金利が続くなかで、借り入れを増やすほど、出資への配当率を高くしやすいからだ。
 いくつかの変調の芽がでているが、不動産投資ファンド大手のダヴィンチ・アドバイザーズが一兆円のファンド組成を表明するなど資金流入の流れは変わってはいない。ただ、「不動産投資は選別色を帯び始めた」(みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリスト)。
【図・写真】工事が進むディズニーリゾートに建設中のホテル(千葉県浦安市)
海外投資家、地価下支え
持続性は不透明
 不動産市場への海外マネーの流入が止まらない。資金は都心から郊外に向かい、最近ではシンガポールの不動産投資会社、キャピタルランドが傘下のファンドを通じ千葉・船橋のショッピング・モール「ビビット・スクエア」を買収した。日本で投資を強化する。
 海外投資家のすそ野も広がっている。これまでは米系が多かったが、アジアの不動産会社、米系ヘッジファンド、豪州の投資家の動きも活発だ。
 背景には積極的な要因と消極的な要因がある。
 積極的な要因は賃料の上昇期待。生駒データサービスシステムによると、二十三区の賃料は二〇〇七年に十五年ぶりに上昇に転じる見通し。主要五区の空室率が四・六%まで低下し、賃料が貸し手優位で決まりやすくなってきた。賃料が上がれば不動産の生み出す収益も増加が見込めるので、投資熱が強まっている。
 消極的な要因は欧米に比べた割安感だ。米国の住宅価格は右肩上がりで上昇、今年六月末時点は一九八〇年の三・六倍。ところが九月末にマンハッタンでラグジュアリーに分類される住宅価格が前年を七%近くも下回った。一方、日本の住宅地価は十四年連続で下げピーク時の六七%となったものの、都区部は〇・五%の上昇に転じた。
 UBS証券の沖野登史彦氏は「海外投資家は下げが予想される米英の比率を下げ、日本の比率を上げている。消去法的な日本買い」と分析する。
 ただ、市場の長短金利が上がれば不動産の魅力は薄れ、売却が広がりかねない。中国で魅力的な投資先が増えれば、日本売り・中国買いが起きる可能性もある。海外マネーは地価を押し上げているが、永続するわけではない。マネーの論理が不動産価格を左右しやすくなっており、かつての右肩上がりを夢見ると大やけどする恐れが大きい。(編集委員 太田康夫)
銀行、リスク管理に動く
融資の急拡大、金融庁が警戒
 「リスクとリターンの管理は適正ですか」。今夏、西日本地域のある地方銀行の担当者は、検査に訪れた金融庁の係官の厳しい口調に驚いた。話題は不動産向けのノンリコースローン。物件から十分な賃料収入が上がっているか、テナントの入りはどうか、契約文書に不備はないか、土壌汚染のリスクは――。矢継ぎ早の質問に「急速に積み上がる不動産融資への警戒姿勢を感じた」と担当者は話す。
 不動産に流れ込む銀行マネーは急速に拡大している。住友信託銀行が、過去の不動産証券化の実績をもとに試算した全国の不動産の取引量は約二十兆円。うち十兆―十二兆円程度が銀行借り入れで賄われているという。大企業向け融資が伸び悩んでいる銀行が一気に不動産融資に動いた。
 その多くはノンリコースローン。大手銀六グループの貸出残高は今年三月末で四兆二千億円。みずほグループ、中央三井信託銀行では約一兆円に達する。地方銀行でも残高が一千億円を超えるところが出てきた。不動産ファンドの投資プロジェクト向けがほとんどだ。
 一方、競争激化で貸出金利から調達コストを引いた利ざやは縮小。三、四年前には二%程度が主流だったが、今は〇・五%を切ることもある。大手銀関係者は「ライバルが増え、入札で落ちることも増えた」と話す。
 過当競争で収益に見合わないリスクを取っていないか――。監督当局が監視を強める理由もそのあたりにある。金融庁検査が背中を押す形で、銀行も融資期間を短くしたり、賃料の引き上げ条項を契約書に盛り込むなど、リスク管理に動き始めた。
 ▼ノンリコースローン 返済原資を担保資産に限定する融資。事業が失敗し、銀行が担保処分では全額を回収できなくても、借り手企業に残額の返済を求めないので「非そ及(ノンリコース)型融資」と呼ばれる。