News Archive : Japan Real Estate

Friday, November 18, 2005

Ishigaki Island Faces New Development Boom

石垣でバブル再燃
新旧住民、賛否でミゾ 

 日本の西端に位置し、美しい自然景観と独特の民俗文化が残る沖縄・石垣島に、バブル期顔負けの開発の波が押し寄せている。二〇一三年に予定される新石垣空港の供用開始によって観光客が倍増すると当て込んでのものだ。規制をかけようとする行政の対応が後手に回る中、美(ちゅ)ら島の開発ラッシュは地元に何をもたらそうとしているのか。 (浅井正智)

 「人口が百人に満たない米原地区に、定員六百六十人の大規模ホテルを建てたらどういうことが起きるのか。波打ち際まで生息しているサンゴが荒らされるのは目に見えている。膨大な水の需要をどうまかなうのかも明らかにされていない。景観を楽しむはずのリゾートホテルが景観を破壊することになる」

 米原に計画されているリゾートホテル反対運動の先頭に立つ早川始さん(35)はこう強調する。

 現在、島内で持ち上がっているリゾートホテル計画は六件。うち四件が六階以上の高層建築だ。とりわけ米原の計画は十三階建てで三百三十部屋と群を抜く。仮に計画通りに建設されれば、沖縄県内の離島では最大規模のホテルとなる。

 もちろんホテル賛成派もいる。米原公民館長の知花忠さん(47)は「この地域には若者が働ける職場がないので県外に出て行ってしまう。八十歳をすぎて一人で住んでいる高齢者もいる。ここにホテルができれば、働き口ができ、とどまってくれる若者もいるかもしれない。何もしなければ、地域の衰退に歯止めがかからなくなる」と訴える。公民館長はこの地域では自治会長と同様の役割を担う。

 米原は戦後の一九五二年、琉球政府が八重山開発政策の一環として、沖縄本島から第一号の計画移民二十八世帯(五十三人)を送り込んだ場所だ。当初からいる世帯は今では十五世帯。代わって近年本土から移住してきた新住民が三十世帯に上る。数のうえでは新住民が圧倒している。

■新空港開港が事業を後押し

 リゾートホテル反対運動は東京都出身の早川さんをはじめ本土からの転入者が中心だ。住民の半数を超える五十七人が建設反対の署名をしたというが、新旧住民の比率を考えればうなずける。インターネットを使って情報を発信し、本土にいる離島ファンたちがそれを応援するというスタイルもネット時代らしい。もともとの住民は高齢者が多く、ネット上で“情報戦”を展開するノウハウもない。それだけに新住民たちの動きに対し、いら立ちの感情を隠さない。

 知花さんは言う。

 「新住民はみんな金持ちで、あくせく働く気もなければ、地域の将来を考える責任もない人たちだ。でも私たちはずっとここに住み、働いて、地域を支えていかなければならない。裕福な彼らと切羽詰まった私たちとは立場が全く違う」

 九六年から米原に住んでいるという兵庫県出身の中島康輔さん(37)は、「地域活動に巻き込まれたくない気持ちから、これまで地元の人と交流してこなかった。話し合いの土壌をつくってこなかったことが今、裏目に出ている」と新旧住民のミゾの深さを明かす。

 石垣島でリゾートホテル計画を後押ししているのは、二〇一三年の供用開始を目指している新石垣空港建設の事業化だ。新空港の滑走路は二千メートルで二百八十人乗りの中型ジェット機の離着陸が可能となり、年間で最大百五十万人の観光客が見込まれる。石垣島もヒトとモノの大量輸送時代に突入する。

■本土から転入 当て込み開発

 リゾートホテルだけでなく、島内のあちこちに本土からの転入者を当て込んだ分譲地やアパートがひっきりなしに開発されている。

 「自然は石垣島の売り物。眺望を阻害するような突出した建物は規制していく必要がある。乱開発は予防しなければいけない」と石垣市都市計画課の担当者は話す。これまで具体的な開発指針がなかった行政も「想像以上に開発が加速度的に進んでいる」(同担当者)ことで、ようやく尻に火が付いたようだ。

 今年六月に施行された景観法に基づく開発規制策を半年から一年かけて策定するというが、早川さんは「計画中のホテルが建設されてしまったら、守られるべき環境はもうなくなってしまう」と非難しており、いささか“泥縄”の感は否めない。

 七二年の沖縄本土復帰以来、石垣島を中心とする八重山諸島の観光は目覚ましい発展を遂げてきた。復帰当時の観光客は年間三万八千人で観光収入は七億円ほどだった。それが今では七十三万人、五百億円に膨れ上がった。人数で十九倍、金額では実に七十倍という飛躍ぶりだ。島の就業人口二万二千人のうち、観光業に携わっているのは三分の一の七千人に上る。

 しかし、石垣市観光協会副会長で島内でホテルを経営する宮平康弘さん(59)は「上っ面の数字に喜んでいてはいけない」と口を真一文字に結ぶ。

 「島で消費される地元産の農産品や魚介類、畜産品は全体の30%あまりにすぎない。地元資本で百床以上のベッドをもつホテルはうちだけで、ほかは本土か外国資本に占められている。七千人が観光業にかかわっているといっても、ホテルや店で働いている多くが本土の人。五百億円の観光収入が地元で循環していないのが実情だ」

■地元は豊かさ実感できない

 沖縄県の一人当たりの所得は全国平均の約七割だが、離島はさらにこれより低い。この数字が観光客は増えれど地元が豊かさを実感できていない現実を裏付ける。ちなみに米原のリゾートホテルも大阪の業者が所有・運営する。島の海岸線近くの多くの土地が、すでに本土の資本に買い占められているともいわれる。

 本土復帰、バブル期に次ぐ「第三次開発ブーム」を迎えた今、石垣島の観光は大きな岐路に差しかかっているようにみえる。

 名桜大学(沖縄県名護市)の岩佐吉郎客員教授(観光計画)は「観光の主流は『見る観光』から『体験する観光』に移っているが、豊かな自然が残る八重山はまだ『見る観光』でやっていける点に特徴がある。つまり八重山観光は“一周遅れのトップ”を走っている。それを維持していくには自然を活用する一方で、保全に努めていかないと結局自分の首を絞めることになる。大切なのは行政が観光をどう舵(かじ)取りしていくかという将来ビジョンだが、それがまだ描けていないのが問題だ」と指摘する。

 生粋の島人(しまんちゅ)であい染めの工房を営む大浜豪さん(33)は「ここで商売している以上、地元企業とかかわっているので、ホテル反対を言い出すのには勇気がいる」と戸惑いを見せながらも、秩序なき開発には強い拒否反応を示した。

 「今では往復の飛行機代より安い石垣島ツアーもある。確かに観光客はたくさん来てくれるが、価格の下落は石垣島自体の価値の下落ではないのか。乱開発を放置すれば、いつか観光客がだれもこないほど魅力のない島になってしまう。その末期症状がすでに出始めていることを、島人の一人として心から憂えている」